大雨のなかで車が急に減速したり、エンジンやモーターが停止したりしたら、車を守ろうとして再始動を繰り返してはいけません。周囲の水位は短時間で上がる可能性があり、車内にとどまるほど脱出が難しくなることがあります。
最優先するのは車ではなく、自分と同乗者の命です。
車が冠水して停止したときの行動
- 可能な範囲で車を安全に停止する
- エンジンまたはパワースイッチを切る
- シートベルトを外して同乗者へ脱出を伝える
- ドアまたは窓から早めに車外へ出る
- 足元を確認し、原則として進んできた方向へ戻る
- 命の危険があれば119番へ通報する
目次
車が冠水すると動かなくなる理由
車は水深のある場所を走るようには設計されていません。国土交通省によると、水深が床面を超えると電気装置の故障や、マフラー・エンジンルームへの浸水が起きるおそれがあります。
ガソリン車やディーゼル車では、吸気口からエンジン内部へ水が入ると停止する可能性があります。ハイブリッド車や電気自動車も、電気装置や駆動用バッテリーへの浸水によって停止するおそれがあります。
また、タイヤが完全に水没すると車体が浮き、ハンドルやタイヤで進行方向を変えられなくなることがあります。流れがある場所では、車ごと流される危険もあります。
冠水して車が止まった直後の対処
1.エンジンまたはパワースイッチを切る
車が停止したら、エンジン車はエンジンを止め、ハイブリッド車や電気自動車はパワースイッチをOFFにします。
停止したエンジンを何度も始動しようとすると、内部に水が入っている場合に損傷を広げるおそれがあります。アクセルを強く踏んで脱出しようとするのも避けてください。
2.すぐにシートベルトを外す
水位が低く、ドアや窓が使えるうちに脱出の準備をします。シートベルトが外れない場合は、緊急脱出用ハンマーに付いているシートベルトカッターなどで切断します。
スマートフォンや財布を探して、脱出が遅れないようにしてください。命に直接必要のない荷物は車内に残します。
3.ドアが開くうちに車外へ出る
水位がドア下端まで達すると、外側からかかる水圧によってドアが開きにくくなります。ドア高さの半分を超えると、内側からはほぼ開けられなくなると国土交通省は説明しています。
水位が低い段階でドアが開くなら、周囲の流れや足元を確認して脱出してください。ドアが開かなければ、パワーウインドウが動くうちに窓を開けます。
4.窓が開かなければ緊急脱出用ハンマーを使う
窓が動かない場合は、水面より上にある破砕可能なドアガラスまたはリアガラスを、専用の緊急脱出用ハンマーで割ります。
フロントガラスは合わせガラスのため、脱出用ハンマーでは割れません。一部の車種ではドアガラスやリアガラスにも合わせガラスが使われているため、自分の車の取扱説明書やガラス表示を平常時に確認しておく必要があります。
水没した車内から脱出する方法|ドアが開かないときの手順と注意点
5.車外へ出たら足元を確認する
冠水した道路では、路面や道路の端が見えません。マンホールのふたが外れていたり、側溝との境目が分からなくなったりしている可能性があります。
JAFは、いきなり両足で降りるのではなく、まず片足をつけて水深を確かめ、ゆっくり両足をつくよう案内しています。流れが強くないことを確認し、一歩ずつ足元を探りながら、原則として進んできた方向へ戻りましょう。
ただし、戻る方向にも水が流れ込んでいる場合や、河川・用水路に近い場合は、その場でより安全な高い場所を選びます。
車内にとどまったほうがよい場合はある?
周囲の水流が強く、車外へ出ることで流される危険が明らかに高い場合は、無理に水へ入らず119番へ通報し、現在地と車の状態を伝えて指示を受けてください。
ただし、水位が上昇し続けている状況で、救助を待つために車内へとどまり続けるのも危険です。ドアや窓が使える段階を逃さないことが重要です。
安全に出られる出口があるなら、早い段階で脱出します。判断に迷ったら、次の情報を119番へ伝えてください。
- 現在地や近くの建物、道路名
- 車種と車体の色
- 乗っている人数と子ども・高齢者の有無
- 車内へ入っている水の高さ
- 水位が上がっているか、車が流されているか
- ドアや窓が開くか
子どもや高齢者が同乗している場合
運転者だけで全員を助けようとすると混乱しやすいため、同乗する大人がいる場合は役割を短く伝えます。「ベルトを外す」「この窓から出る」など、簡単な言葉で指示してください。
チャイルドシートのバックルは、平常時に外し方を確認しておきましょう。緊急時は、荷物よりも同乗者の脱出を優先します。車外へ出たあとも、子どもから手を離さないでください。
車が冠水したときにやってはいけないこと
エンジンを再始動する
水が引いて外観に異常がなくても、自分でエンジンをかけてはいけません。感電、電気系統のショート、火災、エンジン損傷につながるおそれがあります。
車内で水位が下がるのを待ち続ける
水位が上がっている場合、ドアや窓が使える時間は限られます。周囲へ安全に出られる段階なら、早めに脱出します。
車を押して移動させようとする
水の流れや見えない段差によって転倒・転落する危険があります。車両の移動は、水が引いたあとにロードサービスや整備事業者へ依頼してください。
HV・PHEV・EVの高電圧部品へ触れる
ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、電気自動車には高電圧の部品があります。浸水後はむやみに触れず、販売店や整備工場へ相談してください。
脱出後の連絡先と順番
人命に危険がある場合は、まず119番へ通報します。安全な場所へ避難できたあとは、次の順番を目安に連絡しましょう。
- 警察・消防:人命救助、道路上の危険、事故がある場合
- 自動車保険会社:車両保険とロードサービスの確認
- JAFなどのロードサービス:水が引いたあとの搬送
- 販売店・整備工場:点検、修理可否の判断
ロードサービスへ連絡しても、周囲の水が引くまでは作業できない場合があります。車の近くで待たず、指定された安全な場所で連絡を取ってください。
水が引いたあとも自分で車を動かさない
一度でも車内へ浸水した車は、見た目に問題がなくても電気装置やエンジン、トランスミッションなどが損傷している可能性があります。
特に海水に浸かった車は、塩分による腐食やショートが進み、時間がたってから発火するおそれがあります。自分でバッテリーを外したり、エンジンをかけたりせず、JAFや販売店、整備工場へ相談してください。
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よくある質問
車内に水が入っていなければ再始動してもよいですか?
自己判断で再始動しないでください。外から見えない吸気系や電気装置へ水が入っている可能性があります。まずロードサービスや販売店へ相談します。
冠水した道路に車を置いて避難してもよいですか?
人命を優先してください。安全に移動できない車を無理に動かそうとせず、避難後に警察、道路管理者、保険会社、ロードサービスなどへ連絡します。
水没した車から荷物を取り出してもよいですか?
感電や火災、再冠水の危険があるため、安全が確認されるまでは近づかないでください。必要な物があっても、専門事業者へ相談してから取り出します。
まとめ
車が冠水して動かなくなったら、再始動ではなく早期脱出を優先します。
- エンジンまたはパワースイッチを切る
- シートベルトを外し、ドアや窓が使えるうちに出る
- 荷物を探して脱出を遅らせない
- 車外では水深と足元を確かめながら移動する
- 水が引いてもエンジンをかけない
- 人命の危険は119番、車両はロードサービスや販売店へ相談する
緊急時に迷わないよう、家族で脱出手順と緊急脱出用ハンマーの位置を共有しておきましょう。


