車用グリスの種類と使い分け|モリブデン・シリコン・ブレーキ用まで解説

モリブデン・シリコン・ブレーキ用グリスをラチェットくんが紹介するイラスト

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車の整備に使うグリスには、モリブデン、シャーシ、リチウム、シリコンなど、さまざまな名前があります。売り場で並んでいると「どれも滑りをよくするものなら、同じように使えるのでは?」と思うかもしれません。

しかし、グリスは使う部品・材質・温度・荷重に合わせて選ぶ潤滑剤です。金属同士の潤滑に適した製品でも、ゴムに触れる場所やブレーキには適さない場合があります。

この記事では、グリスとグリースの呼び方の違いから、一般整備で使うものから、ブレーキ・駆動系・電装の専用品まで幅広く紹介し、車の部位別の選び方と基本的な塗り方を解説します。

グリスとグリースはどっちが正しい?意味は基本的に同じ

自動車の潤滑剤について話す場合、「グリス」と「グリース」は基本的に同じものを指します。 呼び方が違うだけで、別の性能や成分を表すわけではありません。

技術資料やメーカーの製品分類では「グリース」という表記が使われています。一方、「グリス」は日常会話や検索でも使われる呼び方です。この記事では、基本的に「グリース」に表記をそろえます。

なお、パソコンに使う放熱用グリスや整髪料も同じように呼ばれますが、自動車部品を潤滑するグリースとは用途が異なります。

グリースとは?オイルとの違いと3つの基本成分

グリースを構成する基油・増ちょう剤・添加剤と、それぞれの潤滑・油の保持・性能補助の役割

グリースは、液体の潤滑油を半固体状にした潤滑剤です。流れ落ちにくいため、潤滑剤をその場にとどめたい部分で使います。

基本的な構成は次の3つです。

成分主な役割
基油(ベースオイル)摩擦面を潤滑する鉱油、各種合成油
増ちょう剤基油を保持し、半固体状にするリチウム石けん、ウレアなど
添加剤防錆・酸化防止・耐荷重性などを補う防錆剤、極圧剤、二硫化モリブデンなど

イメージとしては、増ちょう剤が油を抱え込んでいる状態です。ただし、グリースならどんなオイルの代わりにもなるわけではありません。エンジンオイルなど、液体の潤滑油を循環させる仕組みには、それぞれ指定された油を使います。

モリブデン・シャーシ・リチウムは、名前の付け方が違う

グリース選びで混乱しやすいのは、商品名に含まれる言葉が同じ基準で分類されていないことです。

呼び方名前が表すもの
モリブデングリース主に二硫化モリブデンという添加成分
リチウムグリース増ちょう剤の種類
ウレアグリース増ちょう剤の種類
シリコーングリース基油の種類
シャーシグリース主な使用目的・使用部位
ラバーグリース・ブレーキ用グリース対象素材や使用目的

そのため、「モリブデン入りのリチウムグリース」という製品もあります。 モリブデンとリチウムが、必ずしも別々の選択肢になるわけではありません。

車用グリースの種類一覧|成分と用途の両方から確認

車に使うグリースは、次のように整理すると探しやすくなります。以下は整備で見かける主な呼び方の一覧です。互いに重なる分類を含むため、行数がそのまま独立した成分の種類数になるわけではありません。

分類主な呼び方選ぶときの着眼点
汎用・シャーシ系シャーシ、リチウム、カルシウム・カップ指定用途、耐水性、温度
耐熱性などを重視する系統リチウムコンプレックス、ウレア実際の使用温度、部品の要求性能
固体潤滑剤などを含む系統モリブデン、PTFE配合荷重、摩擦条件、対象材質
ゴム・樹脂関連シリコン、ラバー、樹脂用ゴム・樹脂の種類と適合性
ブレーキ関連パッド、スライドピン、シール・カップ用塗る箇所を区別する
回転・駆動系ハブ・ベアリング、等速ジョイント、スプライン用回転条件、ジョイント形式、指定量
ボデー・操作機構ヒンジ・ラッチ、ギヤ・ステアリング用塗装や樹脂との相性、低温での動き
電装関連接点・コネクター用、絶縁・プラグブーツ用電気的性質と塗布位置
特殊仕様フッ素系、耐水・マリン用指定の有無と製品仕様
関連するペースト類銅・ニッケル系焼付き防止剤、セラミック系、組付け用一般グリースとは目的が異なる

このあと、成分による違いを説明し、続いて用途別の専用品を紹介します。購入するときは「どの系統が強そうか」よりも、「整備する部品に使えるか」を先に確認してください。

車に使うグリースの種類と違い

シャーシグリース|車体・足回りの指定給脂箇所向け

シャーシグリースは、車体や足回りなどの給脂用途に使うグリースです。「シャシグリース」と表記される場合もあります。

「シャーシ用」は用途を示すため、すべて同じ成分とは限りません。 カルシウム系の製品もありますが、「シャーシグリース=必ずカルシウム系」とは判断しないでください。

また、車体の下側にある部品なら何にでも使える、という意味でもありません。ホイールベアリングやブレーキなどは、それぞれの指定に合った製品を選びます。

リチウムグリース|幅広い用途で使われる汎用タイプ

リチウム石けんを増ちょう剤にしたグリースです。耐水性などのバランスがよく、幅広い機械部品に使われています。

「万能グリース」と呼ばれることもありますが、万能という名前は、車の全箇所に使えるという意味ではありません。 ゴムへの適合性も、リチウムという名前だけでは決まりません。

モリブデングリース|高荷重の摺動部などに使う

一般に、固体潤滑剤の二硫化モリブデンを配合したグリースを指します。摺動部とは、部品同士が滑りながら動く部分のことです。

高荷重がかかる摺動部などに適した製品があります。ただし、「モリブデン入りなら普通のグリースより何にでも優れる」とは限りません。 回転軸受やゴムに接する場所では、その製品が対象用途に適合しているか確認します。

カルシウムグリース・カップグリース|水に接する比較的低温の用途など

カルシウム石けんを使う系統で、「カップグリース」と呼ばれるものもあります。従来型には耐熱性が限られるものがあり、高温になる部位へ安易に転用できません。

なお、カルシウムコンプレックスなどは従来型と区別が必要です。「カルシウム系」という言葉だけで性能をひとまとめにしないようにしましょう。

リチウムコンプレックスグリース|耐熱性を高めた系統

通常のリチウム石けん系とは異なる複合石けんを使うグリースです。耐熱性を求める用途の候補になりますが、普通のリチウムグリースに自由に継ぎ足せるという意味ではありません。

ウレアグリース|耐熱性・寿命を求める部品など

ウレア化合物を増ちょう剤にしたグリースです。自動車や電装部品にも使われます。ただし、「ウレアなら長期間交換不要」とは判断できません。部品ごとの仕様と整備指示を優先します。

シリコーングリース|ゴム・樹脂に使える製品もある

シリコーン系の基油を使ったグリースで、「シリコングリース」という商品名でも販売されています。

例えば、呉工業の「シリコングリースメイト」は、ゴム・プラスチック部品や低~中負荷箇所などを用途として案内しています。ただし、これはその製品の適用例です。

シリコーン系なら、すべてのゴム・樹脂・金属部品に使えるわけではありません。 接する素材と負荷条件を確認して選びましょう。

ラバーグリース|ゴム部品との相性を考慮したもの

ラバーグリースは、ゴム部品に接する用途を想定したグリースです。ブレーキのゴムカップなどに対応する製品もあります。

例えば、協同油脂の「ラバーグリース #」は、EPDMへの影響が少ないポリグリコール系合成油を基油とし、増ちょう剤にはリチウム石けんを使っています。これは、「リチウム系はすべてゴムに使えない」という判断も正しくないことを示す例です。

ただし、ラバーグリースという名前だけで、すべてのゴムやブレーキ部品に適合するとは判断できません。

PTFE配合グリースとフッ素グリース|同じ意味とは限らない

PTFEは固体のフッ素樹脂です。グリースに配合される場合がありますが、「PTFE入り」と「基油がフッ素油のグリース」は同じ意味ではありません。 例えば、シリコーン系にPTFEを配合した製品もあります。

フッ素系基油を使う製品は、特殊な温度・薬品条件などへの対応で選ばれます。一般整備で高価なものへ置き換える必要はなく、指定のある用途で検討する系統です。

ホワイトグリース・耐水グリース|色や特徴を示す呼び方もある

「ホワイトグリース」は白色系の外観を示す呼び方で、リチウム系など製品ごとに中身が異なります。「白いからゴムに使える」とは判断できません。

「耐水グリース」「マリングリース」も、求める性能や用途に着目した名称です。水に強くても、ブレーキのゴムや高速回転する軸受に適合するとは限りません。乗用車の通常整備では、車両指定を満たすかを確認します。

用途別の専用グリース|ブレーキ・駆動系・ボデー用の違い

ブレーキ・等速ジョイント・ベアリング・ヒンジやラッチ・電装コネクター向けの専用グリースの用途

ブレーキパッドグリース|背面や支持部などの指定箇所向け

パッドの背面や支持部など、メーカーが指示する箇所に使う製品です。鳴き対策などを目的としますが、摩耗や組付け不良を直すものではありません。

パッドの摩擦材やディスクの摩擦面には塗りません。 また、塗布不要の構造・部品もあるため、「パッドを替えたら必ず全面に塗る」という使い方は避けます。

スライドピン用・キャリパーグリース|ピンと周辺素材に合うもの

キャリパーのスライドピンなどに使う製品です。金属同士の潤滑だけでなく、ゴムブッシュ・ブーツへの影響にも配慮する必要があります。

「キャリパー用」という商品名でも、油圧ピストンの内部まで使えるとは限りません。適用箇所を具体的に確認してください。

シール・カップ用グリース|油圧部分の整備に使う指定品

ブレーキのピストンシールやカップなどに使う専用品です。ゴムとブレーキ液への適合が必要で、ラバーグリースなどから指定品を選びます。パッド用や汎用シリコーングリースを自己判断で代用しないでください。

ハブ・ホイールベアリンググリース|軸受の温度・回転条件に対応

整備可能なホイールベアリングなどへ充填するグリースです。耐熱性だけでなく、回転条件や微小な動きによる摩耗など、部品が要求する性能で選びます。

量は多いほどよいわけではありません。密封式ハブユニットなど、追加給脂を前提としない構造を無理に開けないでください。

等速ジョイント・ドライブシャフト用グリース|ジョイントごとの指定が重要

ドライブシャフトのジョイント内部に使う専用品です。モリブデン入りが知られていますが、すべてのジョイントに同じものが適するわけではありません。内側・外側の指定と、ブーツキットの適用・封入量を確認します。

ボールジョイント・ユニバーサルジョイント用グリース

荷重や衝撃がかかるジョイント向けの製品です。給脂式か密封式かを確認し、給脂式の場合は指定品を使います。ゴムブーツの外側に塗っても内部の潤滑の代わりにはなりません。

ヒンジ・ラッチ用グリース|ボデー周りの動きを支える

ドアやボンネットのヒンジ・ラッチなど、指定された可動部に使う製品です。塗装、樹脂、周辺のゴムへの影響も確認します。

鍵穴や電装コネクターまで同じもので潤滑する使い方は避けてください。ラッチの異常や破損がある場合は、給脂だけで済ませず点検します。

樹脂ギヤ・ステアリング・スプライン用グリース

樹脂ギヤ用は樹脂への適合性、ステアリング用はその機構の荷重や作動条件に合わせた専用品です。スプラインやクラッチ関連部品にも個別の指定があります。

クラッチ用という名称でも、摩擦板に塗るものではありません。整備資料が指定する箇所と量を守ります。ステアリング内部などは、異音がするからと外から吹き付ける場所ではありません。

ダンピンググリース|操作感や作動音を調整する専用品

機構の動きを適度に重くしたり、打音を抑えたりする目的のグリースです。単に滑りをよくすることだけが役割ではありません。操作機構の指定品を低粘度の潤滑剤に替えると、期待する操作感を保てない場合があります。

電装用グリース|接点用と絶縁用を混同しない

接点・コネクター用グリース

端子の腐食や摩耗などへの対策として、指定されたコネクター・接点に使う製品です。接点用だからグリース自体が電気を通すとは限りません。 導電性の材料入り製品と、接点保護用の非導電性製品を混同しないことが大切です。

端子の構造、樹脂・シール材、電気的な条件に合う専用品を使い、接触不良へ何でも塗って直そうとしないでください。

絶縁グリース・プラグブーツ用グリース

ダイエレクトリックグリースとも呼ばれ、プラグブーツなど指定部位の保護に使う製品があります。プラグのねじ部に塗る焼付き防止剤とは別物です。

コネクターの適用や塗り方は製品・車両の指示を確認します。端子が適切に接触することが前提で、容器の中身を隙間なく詰めればよいというものではありません。

銅・セラミック・組付け用など、グリースと一緒に見かけるペースト類

銅グリース・ニッケル系焼付き防止剤

カッパーグリース、アンチシーズなどの名前で見かける製品です。主に指定されたねじ・接合部の焼付きや固着を防ぐ目的で使い、ベアリングを潤滑する一般グリースとは役割が異なります。

金属の組み合わせや締付け条件にも関係するため、ホイールナットやスパークプラグのねじ部へ自己判断で塗らないでください。表示された高い耐熱温度も、通常の軸受グリースとしてその温度まで使えるという意味とは限りません。

セラミックグリース・セラミックペースト

セラミック固体を配合したブレーキ用潤滑剤などがあります。ただし、「セラミック」という名前だけでは、パッド背面用なのか、別の高温部向けなのか決められません。

金属を含まない製品でも、ゴムとの適合や使用箇所の確認は必要です。スライドピンやピストンシールへ無条件に使えるものではありません。

組付け用グリース・モリブデンペースト

部品を組み付けるときの初期潤滑などを目的とする製品です。同じモリブデン入りでも、グリースと固体潤滑剤を高濃度に含むペーストでは仕様が異なります。

エンジン内部などで指定される組付け用潤滑剤を、長期間使う軸受用グリースと同じ感覚で選ばないようにしましょう。組付ける部品の手順に従って使用します。

「スプレーグリース」は成分の種類ではない

スプレーは塗布方式です。中身にはリチウム系やシリコーン系などがあり、チューブや缶の製品と同様に用途の確認が必要です。

狭い場所へ塗りやすい反面、周囲へ飛び散りやすいため、ブレーキ摩擦面やベルト付近での使用には特に注意します。浸透潤滑スプレー、シリコーンスプレー、スプレーグリースは、名前が似ていても代用できるとは限りません。

車の部位別|グリースを選ぶときの確認ポイント

次の表は、製品を選ぶ際の確認先を整理したものです。個々の車種に対する使用許可を示すものではありません。

使用する部位確認する内容避けたい選び方
ドアヒンジ・ラッチなど給脂の必要性、ボデー用としての適合、塗装・樹脂への影響音がする場所へ無差別に吹き付ける
給脂式の足回り・ジョイント車両指定の種類、給脂量、給脂間隔「下回りだからシャーシ用」で決める
ドライブシャフトの等速ジョイントジョイント形式、内側・外側それぞれの指定、封入量モリブデン入りなら全部同じと考える
整備可能なホイールベアリング軸受用としての適合、回転条件、温度、充填量汎用グリースで無条件に代用する
ゴムブーツ・樹脂部品に接する部分正確な材質と製品の適合性色や「ゴムにやさしい」という印象だけで決める
ブレーキの各部整備要領書が指定する塗布部位・製品・量ブレーキ用グリースを一種類で使い回す

等速ジョイントは「モリブデン入り」でひとまとめにしない

ドライブシャフトのブーツ交換などでは、ジョイントに合ったグリースと指定量が必要です。内側と外側で指定が異なることもあるため、車種・部品番号・キットの指示を確認してください。

ブーツの外側にグリースを塗っても、内部の給脂や破れの修理にはなりません。周辺にグリースが飛び散っている場合は、ブーツや固定部の点検が必要です。

密封部品は、外から追加給脂するとは限らない

給脂口のない密封構造の部品に、無理にグリースを入れようとする必要はありません。分解や追加給脂を前提としていない部品もあります。

「定期的に全部グリースアップする」ではなく、車両のメンテナンス指定を確認しましょう。

ブレーキ用グリースは塗る場所ごとに使い分ける

グリースを付けないディスク・パッドの摩擦面と、指定品を使うスライドピン・パッド背面・シール部

ブレーキには、摩擦で止める面と、部品を円滑に動かすために潤滑する部分があります。この区別が特に重要です。

箇所基本的な考え方
パッドの摩擦材・ディスクの摩擦面グリースを付けない
シューの摩擦材・ドラムの摩擦面グリースを付けない
パッド背面・シム・支持部メーカーが指示した箇所に、指定品を指定量だけ使う
キャリパーのスライドピンピン・ブッシュ・ブーツへの適合を確認する
ピストンシール・ゴムカップなどブレーキ液やゴム材質にも適合する指定品を使う

パッド背面に使う製品と、スライドピンや油圧部分に使う製品は、同じとは限りません。 「耐熱」「ブレーキ用」とだけ書かれていても、用途欄の確認が必要です。

摩擦面に油脂が付着した場合は、そのまま走行しないでください。拭き取りだけで安全な状態に戻るとは限らず、摩擦材の交換などが必要になる場合があります。ブレーキの分解整備や油脂付着への対処は、整備工場に相談しましょう。

グリースの基本的な使い方・塗り方

指定品の確認、汚れの除去、指定量の塗布、余分なグリースの拭き取りと確認の4手順

1.給脂する場所と指定品を確認する

まず、その部品が給脂を必要とするかを確認します。整備要領書や部品メーカーの指示がある場合は、それを優先してください。

異音の原因が摩耗・破損・緩みであれば、グリースを塗るだけでは解決しません。

2.周囲の汚れを落とす

砂や金属粉を巻き込まないよう、作業箇所の周囲を清掃します。グリースを取り出すヘラやハケも清潔なものを使いましょう。

洗浄剤を使う場合は、ゴム・樹脂・塗装への適合性を確認してください。部品内部の古いグリースを除去する作業は、整備手順に従います。

3.指定された場所に必要量を塗る

露出した摺動面への塗布と、軸受やジョイント内部への充填は、必要量も作業方法も異なります。「どこでも薄く塗る」「隙間がなくなるまで詰める」のどちらも、一律の正解ではありません。

スプレータイプでは、周囲へ飛散させないよう養生し、製品が指示する距離・量・待ち時間を守ります。

4.はみ出しと作動状態を確認する

不要な部分に付着したグリースを除去し、指定手順に沿って動作を確認します。露出部に余分なグリースを残すと、衣服への付着や汚れの堆積につながります。

グリースガンを使う場合も、排出位置や給脂量は部品ごとに異なります。「古いグリースが出るまで押し込む」という方法を、すべての箇所に当てはめないでください。

グリース選びで間違えやすい4つのポイント

NLGIの1号・2号は性能の順位ではない

パッケージの「No.1」「No.2」などは、グリースの硬さの区分です。NLGI番号は大きくなるほど硬くなります。

ただし、測定値としての「ちょう度」は、値が大きいほど軟らかくなります。「2号のほうが1号より高性能」という意味ではありません。 指定された硬さを選びます。

使用温度範囲と滴点を混同しない

滴点は、定められた試験でグリースから最初の滴が落ちる温度です。連続して使える温度の上限を、そのまま示すものではありません。

溶けて流れなければ問題ないわけではなく、基油の劣化や粘度変化なども潤滑に影響します。選定では、製品の推奨使用温度と実際の使用条件を確認しましょう。

色だけで種類や適合性を判断しない

黒色だから必ずモリブデン、白色だから必ずシリコーン、という判定はできません。着色された製品もあり、使用済みのグリースは汚れでも色が変わります。

容器の表示・製品番号・整備記録で確認してください。

異なるグリースを安易に混ぜない

別の製品を混ぜると、元の性能を保てなくなる可能性があります。同じ増ちょう剤を使っていても、製品としての混合適合性まで保証されるわけではありません。

補充は指定品を基本とし、製品を変更する場合はメーカーに確認してください。

グリースを塗ってはいけない場所・自己判断で塗らない場所

グリースを付けないブレーキ摩擦面・タイヤ接地面・ベルト摩擦面・ペダル踏面と、ホイールのねじへの注意

グリースは摩擦を減らすため、摩擦が必要な場所に付けると逆効果です。

場所注意する理由
ブレーキの摩擦面制動性能を損なうおそれがある
タイヤの接地面路面とのグリップを損なうおそれがある
ベルト・プーリーの摩擦面滑りや伝達不良の原因になる
ハンドル・ペダルの踏面操作時に手足が滑る原因になる
ホイールのボルト・ナットのねじ部や座面潤滑によって締付け条件が変わるため、車両メーカーの指示なく塗らない

とくに、ホイールナットへ「次に外しやすくするため」とグリースを塗るのは避けましょう。潤滑剤は、同じ締付けトルクで生じる軸力にも影響します。指定トルクだけでなく、乾燥状態か潤滑状態かという条件も守る必要があります。

また、焼付き防止ペーストは、一般的なグリースとは目的や配合が異なります。ねじへの使用は、部品メーカーの指定がある場合に限って判断してください。

車用グリースについてよくある質問

モリブデングリースでシャーシグリースを代用できる?

名前だけでは判断できません。使用部位の指定と、製品の用途・成分・硬さなどが合う場合に選択肢になります。「モリブデン入りだから上位互換」とは考えないでください。

シリコーングリースとラバーグリースは同じ?

同じ意味ではありません。シリコーンは基油の種類、ラバーは主に対象素材・用途を表します。実際の適合性は製品ごとに確認します。

潤滑スプレーを吹けばグリースの代わりになる?

スプレーは容器・塗布方法の違いであり、中身は製品によって異なります。浸透潤滑剤とスプレーグリースを同じものと考えないでください。指定グリースの代用は、その用途への適合が確認できる場合に限ります。

グリースアップは何年ごとに必要?

車全体で共通の交換・給脂間隔はありません。部位や構造、使用条件によって異なり、通常は追加給脂を行わない部品もあります。メンテナンスノートや整備要領書の指定に従いましょう。

まとめ|グリースは名前より「使う場所と指定」で選ぶ

グリスとグリースは、自動車の潤滑剤を指す場合は基本的に同じ意味です。

一方で、モリブデン・リチウム・シャーシなどの名前は、添加成分・増ちょう剤・用途という異なる基準で付けられています。商品名だけで使い分けを決めることはできません。

車に使うときは、使用部位の指定、接する材質、温度や荷重、必要量を確認しましょう。とくにブレーキや足回りは、適合しない製品で代用せず、判断に迷う場合は整備工場や製品メーカーへ確認することが大切です。

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