線状降水帯やゲリラ豪雨が発生すると、普段は問題なく通れる道路でも短時間で冠水することがあります。
「少しくらいの水なら走り抜けられるだろう」と考えるのは危険です。冠水路は外から水深や路面の状態を判断しにくく、進入してから急に深くなったり、車が浮いて操作できなくなったりする可能性があります。
結論からいうと、水がたまっている道路には入らず、手前で引き返すことが基本です。この記事では、大雨のなかで運転する前の確認事項、危険な場所、走行中の注意点、冠水路に遭遇した場合の判断を解説します。
命を守るための結論
冠水路の「走れる水深」を自分で判断してはいけません。水深だけでなく、流れ、段差、路面の損傷、車種、速度によって危険性が変わります。少しでも冠水していたら進入せず、迂回してください。
目次
線状降水帯による大雨では道路状況が急変する
線状降水帯とは、発達した雨雲が列をつくり、同じ場所に数時間にわたって強い雨を降らせる現象です。短時間で雨量が増えるため、出発時には通れた道路が、帰るころには冠水していることもあります。
気象庁は、線状降水帯による大雨の可能性がある程度高い場合、半日程度前から情報を発表しています。ただし、線状降水帯に関する情報だけで安全を判断するのではなく、自治体の避難情報や気象庁の「キキクル」、道路の通行止め情報も確認することが大切です。
線状降水帯の発生が予想されているときは、次のように考えましょう。
- 不要不急の運転を延期する
- 明るく雨が強くなる前に移動を終える
- 河川沿い、地下道、アンダーパスを通らない経路を選ぶ
- 帰宅時間までの天気と道路状況を確認する
- 「行きに通れたから帰りも通れる」と考えない
大雨のときに特に避けたい道路
アンダーパスや高架下
線路や道路の下をくぐるアンダーパスは周囲より低く、雨水が集まりやすい場所です。排水設備があっても、降雨量が排水能力を上回ると急激に水位が上がります。
進入禁止の看板、警告灯、通行止めのバリケードがある場合は、絶対に先へ進んではいけません。前の車が通過できたとしても、自分の車が同じように通れるとは限りません。
川沿い・用水路沿いの道路
川や用水路が増水すると、水が道路へ流れ込むだけでなく、道路と水路の境目が見えなくなることがあります。濁った水の下には、外れたマンホールのふたや流木、陥没などが隠れている可能性もあります。
地下駐車場と立体駐車場の地下部分
地下空間は水が流れ込むと短時間で浸水するおそれがあります。大雨が予想されるときは、車を地上の安全な場所へ早めに移動させましょう。ただし、すでに周辺道路が冠水してから車を移動しようとするのは危険です。
海岸や河口付近
台風時は大雨だけでなく、高潮にも注意が必要です。海水に浸かった車は、塩分によって電気系統の腐食やショートが進み、時間がたってから発火する可能性もあります。
大雨のなかで運転する前に確認すること
運転が必要な場合は、出発前に次の情報を確認してください。
| 確認項目 | 見るポイント |
|---|---|
| 気象情報 | 線状降水帯、大雨・洪水に関する警報、雨雲の動き |
| キキクル | 現在地と目的地周辺で浸水・洪水・土砂災害の危険度が高まっていないか |
| ハザードマップ | 浸水想定区域、河川、アンダーパス、土砂災害警戒区域 |
| 道路情報 | 通行止め、道路冠水、交通規制 |
| 車の状態 | タイヤの溝、ワイパー、ライト、曇り止め、燃料・充電残量 |
スマートフォンは十分に充電し、モバイルバッテリーも用意しておくと安心です。緊急脱出用ハンマーは、トランクではなく運転席から手が届く場所に固定してください。
車用緊急脱出ハンマーおすすめ7選|水没事故に備える選び方と使い方
大雨の走行中に注意するポイント
速度を落として車間距離を広げる
雨が強いと視界が悪くなり、停止距離も伸びます。速度を落とし、前車との距離を普段より十分に取ってください。急ブレーキ、急ハンドル、急加速は避けます。
水たまりへ勢いよく入ると、巻き上げた水が吸気口からエンジンへ入るおそれがあります。歩行者や対向車へ大量の水をかける危険もあるため、水たまりの手前で安全に減速しましょう。
ライトを点灯して自車の存在を知らせる
昼間でも雨で周囲が暗い場合は、ヘッドライトを点灯します。前方を見るためだけでなく、対向車や歩行者に自車の存在を知らせるためにも有効です。
ハザードランプを常時点灯したまま走ると、方向指示が伝わりにくくなる場合があります。車を安全な場所に停止したときなど、状況に応じて使用してください。
フロントガラスの曇りを取る
車内外の温度差でガラスが曇ったら、デフロスターやエアコンを使用します。視界が確保できない場合は無理に走り続けず、冠水や土砂災害の危険がない場所に停車してください。
ナビの案内を過信しない
カーナビが案内する道路でも、リアルタイムの冠水や通行止めが反映されていないことがあります。道路管理者や警察の規制、現地の警告表示を優先しましょう。
冠水路は何cmまで走れる?「安全な水深」は決められない
JAFの冠水路走行テストでは、水深30cmを走り切った条件でも、速度が上がるとエンジンルームに多量の水が入ることが確認されています。水深60cmでは、セダンやSUVが途中で停止した条件もありました。
しかし、この結果を「30cmなら安全」と受け取ってはいけません。テストは管理された環境で行われたもので、実際の道路には水流、段差、漂流物、陥没、外れたマンホールなどがあります。国土交通省も、床面より低い水深でも速度によって巻き上げた水が吸気口へ入り、エンジンが停止するおそれがあると注意喚起しています。
車高の高いSUVや四輪駆動車でも、水没事故を避けられるとは限りません。
前方の道路が冠水していたらどうする?
- 冠水部分へ入る前に速度を落とす
- 後続車と周囲の安全を確認して停止する
- 無理に進まず、冠水していない道へ引き返す
- Uターンが危険なら、安全な場所で待機して通行止め情報を確認する
- 水位が上がっている場合は、車にこだわらず早めに高い場所へ避難する
すでに冠水路へ入ってしまい、車が停止した場合は再始動を繰り返さず、早めに脱出してください。
車が冠水して動かなくなったら?やってはいけないことと避難手順
大雨時に車で避難してもよい?
車での避難は、荷物を運べて雨をしのげる一方、道路冠水や渋滞によって動けなくなる危険があります。自治体から車での避難方法や避難先が示されている場合を除き、警戒が高まってから自己判断で遠くへ移動するのは避けましょう。
車を使う必要がある人は、雨が強くなる前に移動を始め、ハザードマップで安全な経路を事前に決めておくことが重要です。すでに道路が冠水している場合は、無理に避難所へ向かわず、その時点でより安全な場所への移動を検討します。
大雨に備えて車内に用意したいもの
- 緊急脱出用ハンマーとシートベルトカッター
- 充電済みのモバイルバッテリー
- 懐中電灯
- 防水袋
- 飲料水
- タオルと防寒用ブランケット
- 連絡先を記載したメモ
緊急脱出用ハンマーは、グローブボックスやトランクへ入れるだけでは不十分です。事故の衝撃で飛ばず、シートベルトで体が固定された状態でも手が届く位置に、付属ホルダーなどで固定しましょう。
よくある質問
冠水路をゆっくり走れば大丈夫ですか?
安全とはいえません。速度を落としても、水深、水流、車種、路面状況によって停止や漂流のおそれがあります。冠水している時点で進入せず、迂回してください。
前の車が通れた場合は進んでもよいですか?
進まないでください。車高や吸気口の位置が違うほか、短時間で水位が上がっている可能性があります。
高架下で水がたまっていたらどうすればよいですか?
手前で停止し、引き返すか迂回します。警告灯や通行止め表示がなくても、水深を目視で判断して進入しないことが大切です。
まとめ
大雨のときは、目的地へ到着することよりも、危険な道路へ近づかないことを優先してください。
- 線状降水帯の情報が出たら運転の延期を検討する
- キキクル、ハザードマップ、道路情報を確認する
- アンダーパス、川沿い、地下空間を避ける
- 冠水路には水深にかかわらず進入しない
- 車が止まったら車両よりも人命を優先する
冠水して車が動かなくなった場合や、車内に閉じ込められた場合の対処も、平常時に確認しておきましょう。


